2019年8月2日 2019年度 十七世紀英文学会 全国大会・総会・懇親会の御案内
2019年度 十七世紀英文学会 全国大会・総会・懇親会の御案内
2019年度全国大会(第8回)のお知らせ
日時:2019年9月21日(土)14:00~16:40
(発表時間は各30 分+質疑応答各10分+休憩10分)
〒980-8511 宮城県仙台市青葉区土樋一丁目3-1
http://www.tohoku-gakuin.ac.jp/access/tsuchitoi.html
(4ページの地図をご参照ください。)
1 14:10~14:50 東京支部 司会 伊澤 高志
ヤーコプ・ベーメ入門入門
冨樫 剛
ドイツの職人・商人・神秘思想家ヤーコプ・ベーメ(Jakob Böhme [Boehme, Behmen], 1575-1624; ドイツ語では「ボァーマ」と聞こえる)がここ20年ほど注目されてきている。特にロンドン大のアリエル・ヘサヨン(Ariel Hessayon)がウィンスタンリー、ランター(「暴言族」)およびクエイカー(「友の会」会員)らとの関連で研究を進めてきており、『ジェイコブ・ベーメ入門』(An Introduction to Jacob Boehme, 2014)のような入門書も出している。
本論考で問題にしたいのは、このような入門書を読んでもベーメの思想がわからないことである。ナイジェル・スミス(Nigel Smith)が「ベーメを理解できた人はいるか」(“Did Anyone Understand Boehme”)なる論考を上記『入門』に寄せるほどベーメの文章は難解である。が、より大きな問題は、各論者がベーメの言葉を引用しないこと、彼の議論を要約しないこと、にあると思われる。この現状を正すべく、本論考ではベーメの『神の本質の三原理』(A Description of the Three Principles of the Divine Essence, 1648)をとりあげ、私に可能な範囲でベーメの議論を紹介し、それが1640-60年代のイギリスで人気を集めた理由を探りたいと思う。
2 15:00~15:40 関西支部 司会 松本 舞
17世紀英詩における詩的言語の継承と発展
桂山 康司
用語の創意工夫は、詩的表現発展の歴史にあって中心課題の一つであり、それが、リズムなど、他の詩固有の表現法とどのように組み合わされ、あるいは、対照させられているかの観察は、詩作品理解において欠かすことのできない重要なアプローチである。チョーサーによって切り開かれたと思われる古典語由来の多音節語(polysyllable)―いわゆるaureate terms―の活用は、そのままスコットランドのチョーサー派詩人に引き継がれ、シェイクスピアの独創を経て、17世紀英詩にあっても看過できない更なる工夫が施された。直ちに、ミルトンの名が思い浮かぶが、それは際立った事例であり、孤高の詩人ならではの達成であった。その方向性は、逆に、18世紀の表現法から柔軟性を奪い、ロマン派詩人、特に、ワーズワスの言語実験により、いわゆるpoetic dictionへの批判を招くこととなったが、一方で、この新しい変化の兆しが見えた後も、英詩における伝統的用語法は現代にいたるまでその命脈を保ち続けていると思われる。本発表においては、この表現力の源にある原理の探索を試み、その過程で、詩的言語発展の歴史において17世紀英詩が果たしたと思われる役割の一端を提示してみたい。
3 15:50~16:30 東北支部 司会 川田 潤
shakespeare からShakespeare へ
佐々木 和貴
2010年代には、「17世紀後半のシェイクスピア受容」をめぐる重要な研究書が立て続けに現れた。まずはLucas Erne のShakespeare and the Book Trade (Cambridge UP, 2013)が出版され、Judith MilhouseとRobert D. Humeによる大著The Publication of Plays in London 1660-1800: Playwrights, Publishers and the Market (The British Library, 2015)が続いた。そしてその影響下にCanonizing Shakespeare : Stationers and the Book Trade, 1640-1740 (Cambridge UP, 2017) という粒ぞろいの論集が編まれ、編者のEmma DepledgeはShakespeare’s Rise to Cultural Prominence: Politics, Print and Alteration, 1642-1700 (Cambridge UP, 2018)という優れた論考も発表している。また我が国でも、『イギリス王政復古演劇案内』(松柏社、2009年)でまかれた種が、『王政復古期シェイクスピア改作戯曲選集』(九州大学出版会、2018年)という大輪の花を咲かせ、シェイクスピアの主な改作が日本語で読めるようになった。この分野の研究の風景は、この10年間で、まさに様変わりしつつあるといってよいだろう。
そこで本報告ではこうした動向を踏まえつつ、17世紀中葉から後半にかけて、shakespeareがどのようにしてShakespeareに変貌していったのか、つまり「大作家シェイクピア」誕生の条件はどのようにして整備されたのかを、とりあえずは、改作と出版業者の役割を手がかりに考えてみたい。
まず改作については、1660年代にシェイクスピア作品を次々と改変してその商業価値を高め、後世に伝えたSir William D’Avenant (1606-1668)の役割を改めて評価したい。また、1680年前後の第二次改作ブームをとりあげ、多様な作家がこの時期にシェイクスピアに注目した意味と意義を探る予定である。
一方、出版業者については、Henry Herringman (1628–1704)に焦点を当てることになるだろう。次の世代のJacob Tonson (1655–1736)と比べて、論じられることは比較的少ないが、第四版フォリオ(1685)の出版を中心とした彼の仕事は、この時期のシェイクスピア受容にとって、決定的な意味を持っていたはずである。
もちろん、これらの切り口だけで全体像を提示することは不可能だが、どのような偶然と必然が絡み合って「17世紀後半におけるシェイクスピア像」が変貌・成立したのか、本発表では、その手がかりを提示できればと考えている。またこれは、18世紀に成立するシェイクスピアの神格化(Bardolatry)とそれに伴うシェイクスピア産業の出現のいわば前史を探る試みともなるだろう。
2019年度総会のお知らせ
- 日時:2019年9月21日(土)16:45~17:15(全国大会終了後)
- 場所:東北学院大学土樋キャンパス ホーイ記念館H301教室(全国大会と同じ会場)
総 会 次 第
【報告・連絡事項】
1 各支部活動報告
2 編集委員会報告
3 2018年度会計報告(資料は当日)
4 その他
【審 議 事 項】
1 新会長選出
2 新事務局選出
3 2020年度以降の全国大会・総会の開催地および日程について
4 その他
懇親会のお知らせ
本年度の懇親会は、大会・総会会場近隣のBarm’s Irish Pub(バーンズ アイリッシュパブ)にて開催いたします。お食事を楽しみながら会員同士の意見交換および情報交換をしていただけましたら幸いです。会員の皆様にはぜひご参加くださいますようお願い申し上げます。
- 日時:2019年9月21日(土)18:00~20:00
- 場所:Barm’s Irish Pub(仙台市青葉区五橋2-11-18第三ショーケービル112)
- 会費:7,500円
- 出欠:出席の方のみメールでのご連絡をお願いいたします。8月30日(金)までに各支部事務局にお知らせください。31日以降、出欠の変更等がある場合も各支部事務局までご連絡ください。なお、会場の都合上、変更は9月5日(木)までとさせていただきます。
事務局他
*本部事務局:竹山 友子
*東北支部事務局:川崎 和基
*東京支部事務局:伊澤 高志
*関西支部事務局:松本 舞
*全国大会開催校委員:福士 航