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第6回全国大会(2017年)

日時:2017年9月23日(土)15:00~17:00
(発表時間は各25分+質疑応答各10分+休憩5分)
場所:立正大学品川キャンパス 9号館4階 942教室
http://www.ris.ac.jp/access/shinagawa/index.html

1 15:05~15:40 司会 佐々木 和貴
青木 愛美 Sir Philip SidneyとLady Mary Wrothを繋ぐcorona

1591年にSir Philip Sidney (1554-1568) のソネット連作Astrophil and Stellaが出版され、イングランドにおけるソネットの流行が始まった。それから30年、既にソネットの流行が終息した1621年にSidneyの姪Lady Mary Wroth (1587-1651/3) はPamphilia to Amphilanthusというタイトルのソネット連作を出版した。Wrothの作品が総体としてSidneyの作品の模倣であることはそのタイトルからも明らかであるが、Wrothの模倣的特徴は他にもある。SidneyはThe Old Arcadiaの中で ‘dizain’ と呼ばれる10行連によってcoronaを作り上げているが、Wrothの連作中にもcoronaの形式で書かれているソネット群が存在する。Coronaという形式は、先行する詩の最終行が次に続く詩の初めの行に引き継がれ、最終的にcorona内の最後の詩の最終行が初めの詩の1行目に戻る特徴を持つ。ソネットであるかどうかの違いは意識せざるを得ないにせよ、coronaがPhilip SidneyとMary Wrothの2人を繋ぐ鍵の1つとなる。両者のcoronaを読み解くことで、coronaという形式が持つ意味や意義、ひいてはSidney家の一員としてのWrothの自己意識について考察したい。

2 15:45~16:20 司会 金﨑八重
山本 真司 テキストとイメージ、モノの饗宴
―17世紀前半期英国バンケット・トレンチャーの文学的社会的効用―

近年、テキストとイメージに関する研究の一分野としてエンブレムの関連書が次々に出版されているが、エンブレム等の図像を応用した装飾美術にまで対象を拡大した研究はまだその端緒に就いたばかりである。本発表では、テキストとイメージの関係のみならず、それらが当時モノとしてどのように受容されたかという物質文化的コンテキストにも目を配りながら、初期近代英国の文学活動において社会的相互作用が急速に重要度を増す中で寓意図像が大衆化していく過程を検討する。具体的には、16世紀後半から17世紀半ばにかけて英国で独自の発展を遂げたバンケット・トレンチャー(デザート用装飾木皿)に焦点を当て、主にその文学的社会的効用について、テキスト/イメージを読み・唄い・贈る余興文化の一側面として、新大陸交易の勃興と底流にながれる聖書とことわざという社会的文化的背景を考慮に入れながら考察する。

3 16:25~17:00 司会 伊澤高志
神山さふみ Julius Caesarにおける民衆

本発表の目的は、Julius Caesar (1599)に描かれるローマの政治の転換点を民衆に光をあてて考察することである。1599年のイングランドは、エリザベス女王治世の末期であり、エセックス伯を巡る政治的緊張もあったことから、Caesar弑殺は危険を孕むテーマだった。こうした事情から、Julius Caesarは、王も神もいない世界で民衆が声(vote/voice)を持つとどうなるのか、という実験を行っていると考えられる。
まず、Julius Caesarの民衆は、Shakespeareオリジナルの〈民衆〉というキャラクターの典型であることを考察する。次に、Cobbler―機知に富む明るい道化―が率いる民衆を手掛かりに、劇中の政治世界を分析してゆく。「共和政の父」の家名を継承するBrutusは、Caesarを暗殺し、共和政の再生を企てるが、民衆の声を得られず失脚する。一方、Antonyは、移り気な民衆を雄弁術で扇動し王政への礎を築く。結論として、劇中一貫して民衆を王政派に仕立てることによって、Julius Caesarは宮廷に寄り添う立場にあるということを観客に示すことになる。