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第4回全国大会(2015)

日時:2015年5月22日(金)15:55~17:55(発表時間は各25分+質疑応答各10分+休憩5分)
場所:立正大学品川キャンパス9号館地下1階9B11教室
http://www.ris.ac.jp/access/shinagawa/index.html

1 16:00~16:35 司会 山本 真司
『シェイクスピアのソネット集』の黒い女について錬金術と黒い聖母崇拝からの考察

藤澤博康

近年、『シェイクスピアのソネット集』(以下、『ソネット集』と略記)と錬金術の関連を扱った論考がいくつか発表されている。玉石混交ともいえるこれらの試みのなかでも、マーガレット・ヒーリーの『シェイクスピア、錬金術、創造的想像力』(2011年)は、錬金術に関する知識の豊富さ、テクスト解釈の面白さという点で異彩を放っている。本発表では、ヒーリーの『ソネット集』に登場する「黒い女」を錬金術の観点から論じた部分を紹介するとともに、特にその「黒の過程」(nigredo)をめぐる議論を補完する要素として、主にヨーロッパ・カトリック圏で見られる黒いマリア像信仰(黒い聖母崇拝)に着目し、『ソネット集』の「黒い女」と黒い聖母崇拝の共振し合う部分を指摘する。さらにこの作業を通して、西欧社会における黒をめぐる錬金術的思考と『ソネット集』の接点について考察する。

2 16:40~17:15 司会 笹川 渉
劇場閉鎖と教育的entertainment護国卿時代におけるWilliam Davenantの自己保存

大島範子

1642年の劇場閉鎖令から60年の王政復古まで、イギリスにおける演劇文化は断絶されていたと捉えるのが一般的である。しかし一方、クロムウェルが護国卿に就任する53年以降、政府が禁止する“play”とは異なるものという体裁をとりながら、舞台を使った“dramatic piece”あるいは“entertainment”を上演する試みが見られることは興味深い。中でも、特に王党派の劇作家William Davenantの活躍はめざましい。51年に亡命先のフランスから帰国した後の彼は、クロムウェルの軍国主義的植民地政策を支持する筋立ての“entertainment”をいくつか上演しているが、その中でも、56年のThe Siege of Rhodesは、そのような国威高揚の意識よりも、むしろ「名誉よりも命を大切にすべし」という、国内に多数存在する王党派の残党へのメッセージを打ち出すようにも読める点で特異である。この作品を、Thomas Hobbesの著作の影響、特に彼の契約説の中心となる「自己保存」の概念から考察することが本発表の目的である。

3 17:20~17:55 司会 川田 潤
消費文化と英国演劇

梶理和子

王政復古以降、18世紀にむかうイングランドでは、新たな消費文化が始まろうとしていた。その背景には、国内での生産がコスト的に難しい、あるいは技術的に不可能な商品が海外から、時に遥か遠い東洋からも届く、マーケットのグローバル化があった。そのような輸入品には、服飾品から動植物、果実、陶器や茶、砂糖、香料などがあり、当時としてはかなりの贅沢品であった。
本発表では、17世紀後半から18世紀初頭の喜劇、特に上流社会の風習を描く喜劇に登場する、あるいは言及される贅沢品(とりわけ陶器や茶)に関連する表象に焦点を当てて、このような商品を所有・蒐集・消費したいという欲望を考察する。その際に、(女性の)非常に高額な商品を購入できる経済力、その財産を思うままに使うことのできる自由、そして、そこに絡むセクシュアリティの問題についても目を向けたい。