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第3回全国大会(2014)

日時:2014年5月23日(金)16時~17時55分(発表時間各25分+質疑応答各10分)
場所:札幌アスペンホテル エルムの間

1  16:00~16:35 司会 川田 潤
17世紀イングランドの日本事情

柴田尚子(東北支部)

17世紀のイングランドにとっての日本はどのような存在であったのだろうか。13世紀にヨーロッパで初めて日本を黄金の国として伝えたMarco Polo(1254-1324)の『東方見聞録』は、その後の大航海時代に多大な影響を与えた。これから大国になろうとするイングランドが16世紀から17世紀にかけて世界を目指す中、1600年にはWilliam Adams(1564-1620)は来日した最初のイギリス人となり、その後John Saris(1579/80-1643)が日本との貿易を推進し、1613年Richard Cocksが(?-1624)が平戸のイギリス商館初代館長となった。ここに始まる日英の交流史は17世紀のイングランドにどれほどの影響を与え、興味、関心がもたれていたのだろうか。17世紀のイギリス文学において日本はおろか東アジア事情があまり見えてこないところから、さほど興味も関心も持たれていなかったのではないかと考えたくなるが、実際はどうなのだろうか。本研究発表では、一次資料を読みながら、16世紀後半から17世紀にかけてのイングランドにおける日本について検証してみたい。

2 16:40~17:15 司会 竹山 友子
1633年のスペンサー『アイルランドの状況管見』の出版をめぐって

水野眞理(関西支部)

エドマンド・スペンサーは、『羊飼の暦』の牧歌詩人、『妖精の女王』の寓意物語詩人、『アモレッティ』の恋愛ソネット詩人といった顔を持つが、本職はアイルランド官僚と植民請負人であった。その『アイルランドの状況管見』(A View of the Present State of Ireland以下『管見』と略称)は、アイルランド経験に基づく状況分析と植民地化徹底のための私案である。本書が執筆された1590年代後期は、イングランド政府軍と北部アルスターのアイルランド抵抗勢力の間の「九年戦争」(1594-1603)の初期にあたる。『管見』は単に状況を記述するのみならず、戦後を見据え、アイルランド社会・文化の再構造化,脱ゲール化による支配の強化を提案している。しかし、『管見』が出版の日の目を見たのは、執筆から40年近く後の1633年、アイルランドの状況が比較的平穏であった時期に、ダブリン在住であった好古家ジェイムズ・ウェアの編集によってであった。本発表では、『管見』出版を取り巻く事情を探り、『管見』が17世紀においてもった意義を考察する。

3 17:20~17:55 司会 伊澤 高志
The Roaring Girlにおける“counterfeit”犯罪・衣服・演劇

本多まりえ(東京支部)

Thomas MiddletonとThomas Dekker作のThe Roaring Girl(c.1607-10)は、Mary Frith、通称Moll Cutpurseというロンドンの裏社会に生きた実在の女性をモデルとした市民喜劇である。Mollは同時代の他の演劇やパンフレットでは悪いイメージで描かれることが多いが、本作品のMollは現実より美化されている。本発表では、TheRoaring Girlのテクストに2回登場し本作品の主題とも言える“counterfeit”即ち「偽り」について、犯罪、衣服、演劇という観点から考察したい。具体的にはまず、本作品の中で描かれるスリなどの犯罪に関する場面に着目し、同時代の所謂“rogue literature”を参照しながら、こうした描写が当時の偽りに満ちた文化をいかに反映しているか論じる。次に、本作品でしばしば話題とされる衣服に焦点を当て、異性装や変装と虚と実という問題を論じる。最後に、本作品で同じくしばしば言及される演劇用語に焦点を当て、演劇と偽りという問題を論じる。