開発者の声

CheckLinkの開発動機と特徴

奥田裕司(福岡大学教授)

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 CheckLinkシステムが目指すのは、授業の予習・復習・補助教材としてのe-learningやテキストの無い完全なe-learningではなく、紙媒体テキストを使用した授業を従来通りに展開しながらも、テキストの解答部分のみをデジタル拡張し確実に解答させることで、授業そのものを活性化し授業内環境をより良いものへと変えていこうとすることです。

開発の背景と動機

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 e-learningがこれだけ発展してきたにも関わらず、授業中に教師の口から「今の問題出来ていた人?」「出来ていたかどうか分からないので、出来ていた人はちゃんと手を上げてください。」というような発話が未だになされていないでしょうか。
この様な場合、学習者に解答させた問題のクラス内正解率が分からないので、教師は難しかったと思われる箇所を予想して解説を行うしかありません。しかし、もしかすると実際には正解率の高かった問題の解説に時間をかけているかもしれないし、正解率の低かった問題の解説を軽く流してしまっているかもしれないのです。教師には、「本当に出来ていたのか?」という不安が授業中常に付きまとい、学習者には「正解していたのに解説が長い」「不正解であったのに解説が無い」という不満が募り、授業内に停滞ムードが漂うことになってしまいます。
 つまり現状のe-learningでは、学習全体の効果・効率的なシステム・デザインが十分過ぎる程なされていながら、教育にとって本来最も大切な授業そのものを良くしていく様にデザインされたシステムは十分に考えられてきたとは言えないのです。
 加えて、現在の大学で行われている英語授業は、紙媒体のテキストを使用し普通教室で行われるという形態が大半を占めるのが現状です。その理由として、大学における通信インフラの整備状況やCALL教室割当確保の難しさという点がまず挙げられるでしょう。また、教材を全てPC上で学習するという授業環境に違和感を覚え、教師が存在する必要性を余り感じさせないフルデジタル化された授業に身を置きたくないという理由も多く存在しているかもしれません。
フルデジタル化された学習環境下においては、教師と学習者が、授業という「決められた時間に」、教室という「一箇所に集まって」 学習を進める必然性をどうしても授業中に感じることができないという側面と言えましょう。

CheckLinkの開発

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 e-learningを利用した英語授業内環境のこの様な現状を踏まえ、「教師」「学習者」「紙媒体のテキスト」「e-learning環境」の4者共がそれぞれに重要な役割を演じ、授業という同じ学習の場に集まる必要性を感じる調和のとれた授業内環境を構築・提案するために、紙媒体テキストの問題部分にデジタル拡張機能を付加するシステム(CheckLinkシステム)の開発を進めるに至りました。
 CheckLink開発チームでは、従来の紙媒体テキストの問題部分のみにシンプルなデジタル環境を付加することによって、これまで紙媒体テキストで行なわれてきた従来の授業進行スタイルを変えることなく、学習者がPCや携帯電話端末・スマートフォン端末・タブレット端末を通してインターネット上で解答し、授業中リアルタイムに教師・学習者の両者が解答結果のフィードバックを共有し、活用できるようシステム・デザインを行いました。
 これにより、紙媒体テキストでありながらデジタル学習環境のメリットも享受できるようになり、携帯電話端末さえあれば普通教室での授業進行にも対応するようになっています。
 もちろんこれまでにも、テキストの問題部分の解答ページを自作しweb上で解答させている先生方もいらっしゃいますが、忙しい日常業務の中で毎回解答ページを自作するのは容易なことではありません。CheckLinkシステムを活用すれば、解答ページを自作せずに済み、余った時間でその授業の事前準備や評価等により多くの時間をかけられるようになるのです。

 CheckLinkシステムを考案し、英語テキスト出版サイド、システム開発サイド、私(教育サイド)との3者で議論・検証を重ね、こうして実際の運用に乗せるまでに2年以上の年月がかかりました。CheckLinkシステムは、「学習者、教師、紙媒体テキスト、e-learning環境」の4者が、授業という同一の場所・時間の中で、どの要素も傑出・欠落することなくバランスよく成り立つシステムであることを目指してきたと同時に、より良いe-learning教材作成には欠かせない「教育サイド、出版サイド、開発サイド」という3者の程良いバランスの上にも成り立っているシステムであると実感しております。
 これから、実際にCheckLinkをご使用になられた先生方の率直なご意見・ご要望をお伺いし、一人でも多くの先生方に「CheckLinkを使用して授業が活性化された」と喜んで頂ける様な教材・システムにして参りたいと思っております。